若輩者の戯れ言『雷陳膠漆』

この度、若輩者でありながら、生意気にも経営哲学の様な雑記を掲載する事になりました。
雑記の名は「雷陳膠漆」と名付けました。非常に親しい友に贈るアドバイス、そんな意味を込めております。

年齢の割には、比較的長く経営に携わっておりまして、経営4社の内、最も最近作ったこの有限会社アインスでも6年目、最初に作ったデザイン事務所は既に17年目に差し掛かりました。
過ぎ去ってしまえば大した事ではありませんが、比較的長い間、経営に携わっておりますと、決して順風満帆と云う訳ではなく、紆余曲折、様々な出来事がありまして、それらを総括致しますと、経営は単なる計画や戦略、技術や情報、人脈や資金だけでは割り切れないものがある、と理解するに至りました。
コンサルタントとしてご協力させて頂いておりますと、こうした非論理的なお話は排除する傾向にある為、今回、敢えて、抽象的なお話をさせて頂く事になりました。

大企業の経営者や歴史的に著名な経営者、経営学のオーソリティ達の経営哲学や経営理念と云うものは、その著書や訓示としてよく知られていますし、多くのメディアでも取り上げられおります。
しかし、多くの中小零細企業にとって、それら“ありがたいお言葉”や“名言”と云うものは、残念ながら殆ど役に立ちません。環境や立場が違い過ぎてしまい、“おまじない”にしかならないのです。
勿論、それらおまじないで健全経営維持や成長性をもたらす原動力になるのでしたら良いのですが、日々、苦慮しておられます経営者の皆様やこれから独立、乃至は、起業なされようとしている皆様にとっては、よりリアルな生の、且つ、等身大の経営哲学の方が遙かに有意義なのでは、と愚考しております。

正直な処、私自身もまだまだ成長過程でありますし、「信念を持たないのが信念」と云う様な変わった考え方を持っております。
その為、万人に有効と云えるものではなく、どちらかと云いますと刺激的な経営哲理になってしまいますが、共感出来るにしても反面教師にするであっても、僅かながら皆様にお役立て出来ればと願っております。

有限会社アインス代表 宍倉 勲

第1回「自分でできることは自分でやらない」

第1回目の今回は、「自分でできることは自分でやらない」です。

雷陳膠漆』最初の記事だと云うのに、いきなり、共感し難い、或いは、反感を覚える様なタイトルで申し訳御座いません。
しかし、これは極めて重要な事なので、是非、ご一読頂きたい、と存じます。

多分、多くの方が本記事の逆の信念を持って経営をなされているのではないでしょうか?
自分で出来る事は自分でする、自社で出来る事は自社で行う、そう考えていませんか?

勿論、それが自分の、或いは、自社の本業務であれば、当然、“するべき”です。
しかし、今、取り掛かろうとしている仕事は、ご自身の、または、自社の事業内容にある本業務に該当しますか?
もし、本業務でない事に取り掛かっているのでしたら、こう理解して下さい。

生産性を著しく欠いている、即ち、期待すべき売上を失っている、と。

今現在、経営者の方は、思い出してみて下さい。
会社設立際、かかる手続き、例えば、提出すべき定款等はどなたが作成しましたか?
貴方ご自身ですか?それとも、役員のどなたかでしょうか?
だとしたら、その時点でいきなり、売上を失っています。

貴方や役員のどなたかが専門家であれば問題ありません。或いは、既に経験済みでスムーズに処理出来るのであれば、特別問題視する程でもないかも知れません。
しかし、もし、初めての経験で、その様な作業をしたのであれば、どれくらいの手間と時間がかかりましたか?
その間、本業務の為に費やした時間と手間をどのくらいかけましたか?

専門家ならざるご自身の手で全てなさった方、或いは、役員のどなたかが作成した方は、何故、自作なされたのでしょう?何故、専門家の手を借りなかったのでしょう?
凡そ、考えられるのは、経費をかけない為ではないでしょうか?
何かと出費の嵩む起業時、少しでも出て行くコストを抑える為、ご自身、乃至は、役員が調べて動いてみた、そんな感じではないでしょうか?

端的に云って、間違っております。
正確には、間違っていると云うより、努力の方向性を見誤っている、と云えます。

何故、その労力を、ご自身と自社の本業務に使わないのでしょうか?何故、お客様に対して、その労力を費やさなかったのですか?
営業出来る状態になかった?いえいえ、でしたら、そちらの準備を率先すべきです。

上記は一例に過ぎません。ありとあらゆる場面で、この様な選択肢が現れる筈です。
自分でやらないとは、面倒臭がる事でも他人任せにする訳でもなく、如何に営利団体である法人にとって利益を齎すかに比重をおくべきかであり、タスク毎の優先度を自身で理解し、その判断力の必要性を意味しております。

潤沢な資金があり、圧倒的な利益を上げ、且つ、新規事業として選択し得る余地があるのであれば、本業務ならざる作業に労力を注いでも構いません。
しかし、この場合、経費削減ではありません。これは、投資です。
自身、乃至は、自社にとってノウハウを得る為の労力であり、これを今後、マネタイズし得るビジョンを持っているのであれば、その労力は投資に該当するのです。
ですが、単に経費をケチっているだけであれば、凡策以上に愚策としか云えません。

資金力の乏しい中小零細企業が自前主義に陥れば、無駄なタスク量を抱え込み、生産効率が驚異的に低下します。
それ処か、本来であれば、小回りが利くと云う優位性を失い、理論値として計上される筈の売上を減少させ、当然の事ながら実益低下を招き、益々、経費を抑える傾向になり、更に本業務ならざるタスクを抱え込む事になります。

たまたま時間が空いていたから自分でやった…論外です。
時間は、空くもの(できてしまった)ではなく、空けるもの(作るもの)であり、万が一、スケジュールに穴があいた場合、それもやはり本業務に惜しみなく注ぐべきです。
自分でできる、或いは、できるかもしれない事に時間を費やすより、自分がやらなければならない事、自分がやった方がより大きな成果を上げる事が出来る事に注力すべきなのです。

普通車を運転出来るからと云って、F1ドライバーになれる訳ではありません。
本業ならざる作業は専門家たるプロに任せましょう。何故なら、貴方も本業においてはプロフェッショナルだからです。
慣れない作業に手を出し、仕事を抱え込む暇があったら、プロたり得る本業に勤しみましょう。
それが最も利益を齎すであろう可能性が高いからです。

もう1つ気を付けて欲しいのが、自分ができる事と自分がしたい事の混同です。
どちらの場合であっても、すべきではない、のですが、該当作業が趣味に属すると云うだけで、無駄な作業を抱える事は絶対に避けて下さい。
趣味レベルとプロレベルでは、圧倒的な差が存在します。
それはクオリティの差以上に、かかる時間量(作業量)が圧倒的に異なります。
趣味は時間とお金をかけるもの、プロは時間をかけずにお金を得るものです。即ち、全く逆の特性を有します。
ですから、仕事に趣味を持ち込むのは絶対に止めましょう。会社にとって見え辛い損害を与えている事になります。
もし、仕事に活用したければ、少なくともプロレベルを軽く凌駕しているだけのスキルを身に付けてからにしましょう。

何れにしても、自分でできる事、自社で出来る事であっても、必ず、誰かに仕事を投げましょう。
本業務に集中する事が、その時点での既存タスクによる理論値における最大の売上を計上する為に必要な最低限度のタスクであり、優先度を精査して仕事を振り分け、眼前の経費に囚われ、本質的な無駄を作らない事にお気を付け下さい。

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